朽ち果てる2006年09月25日(月)02:50
桝田省治『鬼切り夜鳥子 〜百鬼夜行学園〜』
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う〜ん。 すごくテンポのいい文章で読みやすいし、直球ながら構成もしっかりしている。 終章のタイトルあたり、捻りのきいた小技も混ぜ込んできていて、全体に 手堅くまとまったジュブナイルだと思うんですけど。
ですけど、違う。 期待はずれ、というのは言い過ぎなんだけど、でもやっぱり期待していたものとは、 明らかに違ってしまっている。
「桝田省治が小説を書く」と聞いたときに抱いた期待っていうのは、 言ってしまえば『頂天のレムーリア』なんですよね。 本業小説家ではないところから生まれる、破天荒な着想と奇想天外な展開、 そして何より独特の台詞回しから滲み出す、芯のある人物観。 本作は小説として良くまとまっている代わりに、そういった部分が すっぱりと切り落とされてしまっている。 桝田省治独特の、ポジティブな腹黒さを前面に押し出したテキストが ほとんど見当たらないというのは、残念というほかありません。 もっと調子に乗ってほしかった、というのが正直なところです。
佐嶋真実のイラストは表紙・口絵・挿絵、どれをとっても扇情的で 文句のつけようがないんですけどね。
!あ、二枚舌の昼子ネタには素直に笑いました。
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