日記

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2020年9月1日(火) 宣告・1年後の桜

 突如、さくら学院から発表された「大切なお知らせ」。
 大事なお知らせ。
 アイドル業界ではもはや定形となった枕詞…その意味することは、本文を読まずとも明らか。
 そんなお知らせが、2020年9月1日午前0時に、さくら学院職員室から発せられた。

 前々日には、3月から延期されていた2019年度の卒業式が配信という態ではあるが執り行われ、
 そこでのパフォーマンスや熱量はライブそのものと何ら代わりはなく、学院生のブランクは愚か、
 このコロナ期間でも弛まぬ鍛錬を積んでいたことを強く感じさせてくれる頼もしいものであったほか、
 配信そのものも、もう採算度外視であろうほど手が込んだものであり、職員室含む、
 関係者一同の「意地」のようなものを感じ、観覧者すべてが賞賛するような公演であった。
 また、発表数時間前には謝恩会ということで、担任が当該年度の思い出を存分に語り、
 父兄と呼ばれるファン一同は心温まる状態で、さあみんな来年度も…!という気分となり、
 いわば寂しさよりも前を向いていこう!といった、いわば高揚した状態になっていた。
 「なっていた」、その直後である。

 自分がこれを知ったのは、午前4時。通常通り起床し、携帯を確認した時である。
 まず思ったのは、その時が来てしまったか…というものであった。

 自分は薄々、この時は遠くないだろうなと思っていた。
 だが、ほんの数日前に見たパフォーマンスは、その疑念を払拭するに十分な公演であり、
 ホンのちょっとでもそんなこと考えてしまっていて申し訳ない、と謝りたいような状態だったのだが、
 それだけに、しばし状況が整理できない状態となってしまったのが正直なところである。
 受け止める受け止めない受け止められない、という前の状態である。

 「その時は遠くないだろう」と思っていた理由。それは決して少なくない。
 まず、経営が変わったことで、これが一番の要因だと思っているが、事業の整理が目に見えて進行していたこと。
 我々に馴染みがあるところでは虎姫一座が浅草での活動を休止、大里会長肝いりの事業でこの扱いには、
 違和感以上に恐怖心を抱かざるを得ないほど、新しい経営の圧力を感じざるを得なかった。
 本体で抱えていた声優事業の分社化も然りだが、ここは、現在活躍中の人材は本体に残すしている点も、
 将来的な会社分割も見据えていることを感じさせ、背筋が寒いというのが正直なところで、
 これら具体的な事象と、日に日に減っていくキッズの陣容を見ていると、おそらくではあるが、
 キッズ事業部と呼ばれる部門も、社内で厳しい状態にあったと察するのが自然であろう。
 @onefiveも個人的には、そんなキッズ事業部からいち早く資金回収するプロジェクトとして、
 社内に通りやすい(理解されやすい≒リスクが少ないと認識されやすい)売れている先輩をデュプリケートする、
 そんな形で進んだのだろうな、と自分は思っており、それ故にここでの怒り猛りにつながっているのだが、
 要するにそれらすべてをひっくるめて、あまりいい雰囲気ではないな、という状況を感じていた。
 加えていうならば、ASH出身者の転入も、BABYMETALのメインボーカルと同じ伝説を作りあげ、
 キッズ部門としての実績を上げていく。そういうことだったのではないか。

 早急にわかりやすい実績をあげる…経営が交代するというのは得てしてそういうものである
 また、前任者否定をするのが経営として評価されやすく、それ故に、少しでもスキがあれば、
 そこを叩くであろうことは、通常の企業でも往々にしておこなれていることである。
 経営者としては自然な対応だ。
 アミューズでもそういうコトが起こっているのだろうなあ、と薄々思っていた。

 一方で、さくら学院は社外に向けては教育機関として認知されているほか、
 今までみよまつやなたひー、さらにはBABYMETALといった、一線級の戦力を送り出しており、
 ここは一定の評価を得られるところであろうから、社内でも複雑な鬩ぎあいがあったであろうことは、
 容易に想像ができる。さくら学院があったからこそ、彼女たちは一線級まで上り詰めたのだ、と。
 当然ながら、私もそうだし、父兄一同もそう信じているのは想像に難しくない。
 幸いなことに、本人たちもことあるごとにそうコメントしてくれていることには、
 勇気と誇りをもらっているほどだ。

 しかしながら。
 そして、これは次の理由になるのだが、会社としての育成方針の変更が垣間見えたことである。
 従前は、多くの人材を抱えながら有償でレッスンをしつつ、花が咲くまで丁寧に育成していたキッズ部門。
 夏の発表会など、業界人へのお披露目も定期的に実施されており、次世代を幼い段階から育む風土が感じられたし、
 様々なコンテストとタイアップし、その候補生を見初めていたのがキッズ事業部だったはず。
 だが、会社として一から育成し種から花を咲かせるよりも、日本全国レベルで蕾を探したほうが、
 より効率的なのでは…という考えに変化したのでは?とこの数年感じていた。
 実際、全国各地で自社オーディションが開催され、そこでの優績者が実績を上げていくのを、
 我々父兄は誰よりも見ていたはずだ。また、それに合わせてさくら学院生も地方組が増え、
 学院生の負担増加には(勝手にだが)一定の憂慮をしていたというのは、否めない事実であったろう。
 さらに、種はおろか、ピックされる蕾の数の減少は、キッズの陣容縮小にモロにつながっていた。
 2015年度転入生予想時には50名超いた予想対象者は、足元10名程度になってしまっているのである。
 (通常の企業を遥かに超える)人材育成に係るコストがより効率的に、
 …直接的にいえば、削減に向かうのは不可避ということだったのだろう。

 要するに、学院生のパイプライン減少は如何ともしがたい状況だと察せられた。
 2018年度、謎の「転入式あるの?」状態も、別に演出ではなかったのではないか。
 土日毎、長期休暇時は親元離れて上京し、徹底的なレッスンを小学生のうちから行う。
 家庭によほどの丹力が無ければ、いくら本人に素質があっても、それを許容ことは難しかろう。
 くわえて、蕾から花咲く確率が非常に高く、その花も実に華憐に咲くとあっては、
 従前の、いわば丹念丁寧な育成システムの要否に疑問が生じるのは不自然なことではあるまい。
 さくら学院が優秀な人材を排出している!への反論として、いやいや元々優秀な蕾が、
 さくら学院の中にいただけではないの?という声が出てきたとしても不思議ではない。
 さくらが誇るBABYMETALにしても、外部からの登用でも対応可能なのでは?というのが立証されてしまった。
 (「BABYMETALはさくらより出でて〜」とか言っても、外部からの登用でも十分に対応できたしね…)
 ともかく、前述の育成結果と対になる実績の発芽とパイプライン縮小は、大いに職員室を悩ませたのではないか。

 それでも、継続存続の意思は強かったと思う。
 決定打はやはり、コロナだろう。しかし、個人的には他のグループのような集客減による収入減よりむしろ、
 ユニットとしての存続の難しさにあったのではないか。移動の制約が激しいうえに、
 集合でのレッスンが難しいとなると、よしんば転入生が入ったとしても育成は難しい。
 パフォーマンスの精度で群を抜くさくら学院のクオリティを、集合レッスンではなく、
 個別やリモートレッスンで維持できるとは、さくら学院を知っている人なら知っている人ほど、
 よもや可能とは思うまい…。クオリティの高さを維持することが困難である、というのは、
 今の状況を所与とすると、認めざるを得なかったのではないか…。
 もちろん、形だけ転入して…という選択肢もあっただろうが、あくまでも現行のクオリティを保つ必要がある、
 保てないのであれば取れる選択肢は一つ、という職員室の気概は理解できるし、
 それこそが「さくら学院の誇り」なのならば、父兄としても受け止める必要があるのではないか…とも思ったのだ。

 と、長く記載するほどに、当該方針となった理由を感じていたので、なんでだよという感情よりむしろ、
 ついに来てしまったか、という虚無感のほうが大きいのが正直なところである。



 だがしかし。
 これより1年間の活動期間を明示し、キチンとケジメとして10周年を駆け抜けるとした職員室の方針は、
 アミューズとして最大限の敬意を感じるし、この状況で出来うる可能な限りの筋は通したと思う。

 あとは、学院生の受け止め方と、今後のモチベーションである。
 LoGiRL…という、週一でのネット番組が終了することに、父兄以上の悲しみを見せていた彼女たちが、
 自らの学び舎がなくなることをどう受け止めるのかは、正直なところ、想像することができない。
 それぞれが、最上級生になったときの自分についてイメージを膨らませたり、そこに向かっての、
 その娘たちそれぞれの準備や努力などもあったであろうことを思うと胸が締め付けられるし、
 父兄とか言ったところでファンの無力さを痛感するばかりで、情けないとしか言い様がないのだが、
 ぜひ、彼女たちの将来について、フォローは最大限に実施してほしいと願っている。
 これからの1年間は、さくら学院の歴史の中でも、最も濃密な一年間となるはず。
 その一年間に得た経験や知識は、おそらくどんな経験よりも将来の自分を支えていくと確信している。
 学院生にも、そう信じてほしい。

 さくら学院は、キラメキを探す物語。
 本来ならば、卒業までに見つけるキラメキを、あと1年間にはなるが、より輝いたキラメキとすべく、
 関係者には努力をしてほしいし、学院生も決して卑屈になることなく、この状況下でも活動が許される、
 稀有なグループであることに誇りを以って、最後まで駆け抜けてほしいと思っている。

 父兄としてなにが出来るか。
 私も常時それを考えながら、与えられた一年の彩りを豊かにできるよう、注力していきたいと考えている。

 …でもやっぱり、辛いよなあ…(涙

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