小森まなみ 朗読&アコースティックライブ
『きんもくせいナイト〜Premium First Flight』

2年ぶりに参加の小森イベント。心境や如何に…?



 いきなりだが、僕は小森系の中では色々あった人間である。
 始めて手に入れた93年発売のアルバム「ALICE」の語源、
 All Listeners InterCommunication Endlessの理念を実現すべく、Silent Sirenを旗揚げして12年。
 まだインターネットなんてものが一般的ではないその頃、電子メールさえ特殊なツールだった時代に、
 ラジオがネットされている地域で局所的に形成されていた小森系コミュニティを、
 まさに全国股に架ける形で繋いでいこうとしていたのが、Silent Siren当初の活動だった。
 結果としては、インターネット等、予想もしなかったのメディアの進歩もあり、
 その理念はまた別の次元で実現していくことになったのだが、僕のやったことは、
 トリガーとして十二分に意味があったとは思っている。
 小森本人よりも、小森が原資産になったコミュニティを尊重すると居う理念について、
 正直小森がどう考えていたかは分からないが、それでもそれを盛り上げ、
 一定の繋がりを導くきっかけになれたのは、非常に喜ばしい事であるとの自負はある。
 それが1行目の文章に繋がるわけだが、正直な事を言うと、自分よりもむしろ、
 僕の回りに居て、僕を盛り上げてくれたり、支えてくれたり、指導してくれたり、
 それ以前に活動の土壌を作ってくれていた人が居たからこそ成立した世界であり、
 僕自身は、偶然良いタイミングでそれを総括しただけの人間としか思っていない。
 それでも、その活動には充実感や達成感があり、それを感じさせてくれた、
 諸先輩やBuddy達には感謝の念が耐えないのであるが、どうも今に至るまで、
 その気持ちを伝える場を作れずにおり、いわゆる不義理な人間になっていた。
 そんな背景も有り、思春期を想定している小森のトークに対するジェネレーションギャップも有り、
 さらには、自分の置かれた微妙な立ち位置も有り、最近小森系とは距離を置いてた。
 ただ、木の葉の影からこっそり見守るようなことは、していたのだが…。

 そう、2年前、2004年12月18日の日記から引用してみよう。

 1994年12月18日、名古屋レインボーホール。
 10年経ちました…。10年かぁ。
 (中略)
「もう、こっち方面は忘れてるのかと思ってた。
 というか、みんな『お前忘れてるだろ、白状なヤツだな』って思ってるわよ」
「忘れるわけなかろぅ…というか、忘れられるわけが無いだろ…。
 あまりそっちの話題を出さないのは、今、必死になって心を暖めている人の邪魔をしたら悪いからだよ…。
 色々考えてんだよ、これでも……」
「…切なくなってくるわね…」
「…いろいろな、一言で語りつくせないからな、こればっかりは…」

 そういうことなんだけど…。


 なにはともあれ。いきなりの急展開。

 1通のメールが届いた。
 リスナー誌「ひまわり」を主催するH氏から、イベントお誘いメールである。
 H氏は、かつて「関東の良心」と呼ばれた中核リスナーの一人であり、
 僕のリスナーとして師匠である。つまり、上でいうところの「不義理」している人なのだが、
 そんな不義理を物ともせず、イベントにお誘いいただいた。
 これが、2年振りのイベント参加のキッカケである。もちろん、参加でお返事。
 ありがたいことであった。

 しかし…正直、参加していいものか悩んだもの事実である。
 参加しちゃいけないという理由はないし、参加してはいけないと言うのも無いのだが、
 なんとなく、小森界に対しては、人目を憚って行動しなくてはならないような後ろめたさが有り、
 特に、小森本人に対してはそういう感じになってしまっている。
 さらには、メンタル面の問題もあって、小森まなみが持ち僕にリンクしている世界観は、
 今の僕にはいささか重たく、色々な現実を複雑に考えてしまいそうな気がしたのである。
 そう、小森が造り川崎が醸成した感覚というのは、非常に深いものがあって、
 非常に精神論的な位置に存在しているが為に、今の環境でその感覚を呼び戻すことが、
 僕の生活にどのような影響を与えるかさっぱり不明で、怖かったのである。


 とはいえ、根はポジティブ。参加するとなったら一途。
 当日は平日並みに仕事だったのだが、4時に切り上げイベントの準備を開始。
 先ずは聖地赤坂に足を運び、花束を入手。感謝の気持ちをどう表現しようと悩んだのだが、
 いつの間にかコンサバティブな発想しかできなくなったらしく、花束に落ち着いた。
 僕は花束を贈るという行為が好きで、特に、それを入手して贈る人に届けるまでのドキドキ感と、
 すれ違う人からの視線を感じるのは、なんとなく快感である。
 すれ違う人のは、大体「うぉ、この男、気合いれてやがる…」みたいな視線なのだが、
 それは決して間違いじゃないから、心の中でニヤリとなる。まぁ、気合の種類は、
 だいぶ違うのだけど。

 5時15分、会場着。開場45分前で、ちょっと早く来てしまったかもしれない。
 あまり人がいないな…と思ったら、H氏夫妻が正面に。20周年イベント以来、
 2年ぶりの再会と、今夜のお誘いに感謝を込めて挨拶。すごい花束ね、と言われるが、
 本当はもっと大きい花束を持ってきたいぐらいの気持ちではあった。
 物理的なものでしか感謝の念を伝えられないのは悲しい事だけれども、
 物理的なものであったとしても、伝えないよりも伝えたほうが良いのは間違いない。
 ただ、物理的な限界はあって、持てる精一杯の大きさの花束がこれだったのである。

 さて、開始に向けて人が集まってくる。
 しかし、さすが10年近くもこの世界から遠ざかっていただけあって、
 知らない人ばかりである。世代交代というか、人の入れ替わりはあるようで、
 そういう面では健全な世界が存在しているのが分かって、なんとなくホッとした。
 もちろん、僕の居場所は無いから、隅でその様子を観察するばかりであったが…。

 でも、開演前になると、懐かしい顔ぶれとの再会が待っていた。
 先輩リスナーでもありイベントでの師匠でもあるM氏、絵描きとして尊敬し続けてきたZ氏とT嬢、
 そして誰より、最強リスナーの名を欲しい侭に全国を行脚したW氏。
 お互い「おおっー…」という状態ではあるのだが、どちらかというと、
 向こうがこちらに対して抱いた「おおーっ…」のほうが大きかったようで、そこはやはり、
 非常に申し訳ない気分になったというのが正直な所である。
 とはいえ、特にW氏との再会はサプライズであり、嬉しかった。
 是否は不明だが、みんなあまり変わっておらず、これまた嬉しさにブーストを。



 H夫妻入魂のTEL予約の甲斐が有り、20番台での入場となった。
 こういうのも含めて、申し訳ない気分。というか、さっきからずっと「申し訳ない」
 なのだが、本当にそういう気分なのだからしょうがない。うーん…。
 しかも、一緒にならんでいたH2嬢(初対面でした)に
「かわさきさんの噂とか武勇伝は、かねがね聞いてますよー」
 とか言われて、うう、そうか…噂か…どれなんだろう…とクラクラしたり。
 噂…いや、伝説になりそうな事ばかりやってきたので、ドキドキする。
"♪果てしない思い込み それはそれでエナジーでした"
 −"Disco 80's", Kan, 1996−
 ホント、今思えば果てしない思い込みだけをエナジーにして動いてたなヲイ!
 噂されても、そりゃしょーがねぇやアハハ(爆

 入場。会場は小綺麗なライブハウスで、ワンドリンク。
 早めに入れたものの、もう席順で目を裏返すような状態でもないので、
 後ろのほうに席を確保して、早速ドリンクを受け取りに。チョイスは生ビール。
 あー…仕事の後のビールはいいな…とメンタルにトロけていると、
 ちょうど入場してきたT嬢に
「さっそくビール?」
 続けてZ氏に
「病んでるねぇ」
 と笑われる。こちらも苦笑し、ハハハと笑う。
 確かに、最近の酒は美味しくない。量は増える一方なんだけど。

 まずは、全体として感じた事を。
 総括して言うと、小森まなみという存在は、僕の精神の深いところに位置しているのを改めて実感。
 歌ひとつ聞くにしても、小森は、その歌の成り立ちとか色々な事を考えて歌っていて、
 こちらはそれも分かっているし、その歌に纏わるリスナー同士の交流とかも思い出されて、
 それは単純な「歌」というレベルを超えて存在するものになっているのを、改めて実感した次第。
 YELLを君に、を歌う前のMCに込められた思いは、僕の中では未だにリアルだし、
 大好きに至っては、リスナー交流の原点な訳で、楽しい気分と神妙な気分が入り混じる。
 自分でも分かったのだが、歌を聞いている間はずーっと神妙で複雑な顔をしており、
 ひょっとしてステージからは
「…あ、あいつ、久々に来て、そのノリの悪そうな顔はなによー…っ…!」
 だったかもしれないが、つまりは、色々考えてしまわざるを得ない状態だったのである。
 でもまぁ、そりゃそれでしょうがない。僕は、自分の就職が決まったとき、
 親よりも先に、小森に報告するほどの状態にあった訳で、そんな、今までは忘れていた、
 そういう些細な事まで思い出してしまうぐらいのトリップ状態に陥ったわけだから、
 神妙以外どんな表情をすればいいのかはよく分からないし、分かったとしても、
 結局は神妙な状態にならざるを得ない気はする。それほどに世界は深い。
 おそらく、僕に子供が出来たら、その子供は生まれたときから「大好き」を歌えるだろうな、
 と思ってしまうほど。妙な話だが、そういう感覚なのである。

 自分の心境だけだとちょっと物足りないから、久々に見た小森から受けた客観的な印象を言うと、
 2年前とちょっと変わったような気がする。2年前のイベント記録で、
「今、新幹線の中で、レインボーホールの状況をmp3で聞いているんだけど、
 この時って結構(彼女の心境も)微妙で、若干ネガティブで弱い心境がチラついてんだよね。
 今回はそんなのカケラもなかったから、すごく良かった!!本当に良かった!!」
 (注:どうやら、感想を新幹線の中で書いていたらしい)
 と書いたように、あの時は未だかつて無いポジティブさを感じたものの、
 今回は、若干のネガティブさをかもし出していたのを感じたのである。
 節々で、人生いいことばかりじゃなくて、辛い事もあるけど頑張ろうね、と、
 世の中の真理みたいな事をサラリと言っていたけど、多分、あれは、
 こちらに向けたメッセージでもありながら、小森が今在る状況なんだろうな、と。
 まぁ、そういうことを感じたのも含めて、神妙だったわけなんだよ。

 ライブ自体は、自身の曲も含めもっと盛りだくさんになるかと思ったけど、
 そこは、腹八分目という言葉がぴったり、そして、爽やかな感じを保ちながら進行。
 アコースティックライブ、ということで、結構しんみりな曲を続けて…かと思いきや、
 むしろ生音を生かす演出、という感じで、これは良い仕事だなぁ、と。
 魔法のシグナル、やら、Holy eysやらをやられたら、多分僕は泣きながら逃げ出すだろう…な、
 みたいに思っていたもんだから、そういう方面ではなくて助かった…。
 あと、OPの朗読のときに、入り口から出たり入ったりする人がいて、
 なんて迷惑な人だ…とおもって見てた人が、いきなりピアノの前に座り、
 しかもそれが、僕が小森の信奉者になったきっかけの曲「Believe」の作曲者だったと知り、
 なんか愕然とした…。世の中って分からないなぁ。

 そんなんで、最後まで歌とともに色々色々色々考えて、1時間半が経過。
 ライブも終わり、メッセージカードをもらい退場。カードのイラストはZ氏のもの。
 Z氏とT嬢は、本当に「小森の至宝」だなぁ…と。それに対して、自分は、
 一体なんなんでしょう、アハハ(苦笑

 そして、飲み会(打ち上げ)。H夫妻の作るリスナー誌「ひまわり」の集いなのだが、
 有り難くもお誘いいただいたので、参加させていただく。でも、席は一般から隔離の、
 危険人物席へ。まぁ、W氏と僕がいれば、それはそれでしょーがない(w
 W氏はすっかりハロヲタ化していたが、どうにも小森に対して抱いている感情は、
 僕と似たようなものがあるらしく、そういう面には共感しつつ、昔話を肴に、
 酒を飲む飲む。最初は、結構神妙な話もしていたような気がしたが、それはそれ、
 途中、むかし僕が色々なリスナー誌で展開した
「イベント後の飲み会における、ペーパーチャット」
 (紙で、リレー形式でイベントの感想やら、飲み会の実況中継をするもの)
 が始まったりしたら、いやー…なんといいますか、これは楽しいですな!へ(爆笑
 ちょっと前までの感覚と違い、やっぱり勝手知ったる方々との酒は楽しい!(笑
 色々な武勇伝というのは、こういう時の肴になるためにもあった方がいいじゃん、
 みたいな開き直りな心境になっちゃうぐらいツキぬけて楽しくなってきたり。
 大体、話したり列挙したらサイト容量が足りなくなるぐらい色々してきたんだよね。
「あんなことあったー!」
「こんなこともあったー!」
「そんなこともしたじゃーん!」
「どんなことでもネタになりゃよかったんじゃーん!」
 そんなノリへ突入したら、もう止められない。大いに盛り上がって、
 やっぱりここは危険人物席だった、今のリスナーには聞かせられん!みたいな、
 そういう形で終了!しかし、"7th Avenue"というキーワードで、あそこまで盛り上がれる、
 それってすごい事だと、なんか今すごくリフレイン。今ここを呼んでいる人にはわからないし、
 小森系でも、よほどの人しか分からないかもしれないんだけど、そういう小さい出来事を、
 今に至るまで共有できているってのは、本当に大切な事だと…。

 結局、その後は素直に家路に。しかし、いや、なんか、すごくリフレッシュ。
 もちろん、家に帰ってきてから聞いた「Believe」には、また「ずーん…っ↓」
 になったが、まぁ、これは、一生付き合っていかねばならん感情かな、と。
 それよりも、かつてあった世界がまだあり、みんながそれを否定していなかったのは、
 なんだかんだで嬉しかったし、やはり色々な形で皆様に恩返ししてゆかねば、
 という気持ちを強くした次第。

 今夜は、First Flightだった訳ですが、Second、Thirdと、次からは、なるべく
 いろいろなところで、コミットしてゆければと意を決した、という事で、
 感想とさせていただきたく。…最初の神妙な雰囲気から、えらくツキ抜けたけど、
 まぁ、それは僕の心境が、飲み会により、本当にツキ抜けたつーことで。


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