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■最強とは?■(1/3)※ランダム表示
(続編の最後まで読んでる方でないとちょっとネタバレになります)

 将軍セイネリアが登城する場合、ついていくのは側近のレイリース……というのは当然ではあるのだが、ごくたまにレイリースに用事があったりいろいろ事情があったりして別の人間がつくことがある。その場合まず大抵はカリンになる訳だが、カリンが忙しかったりしてどうしてもいけないとなれば、その場合ついていくのはエルになるのは仕方ない。
 という事で、今回はその超レアケースでエルが城についていく事になった訳なのだが……ぶっちゃけエルは城になんか来たくなかった。根っからの庶民であるエルは堅苦しい席は大嫌いで、だから会議やら式典の仕事でも絶対にセイネリアの傍で待機してる役なんてお断りだし、そういう場合は裏方専門だ。立場上騎士団やら貴族の館にいって話を聞いてくる必要がある事もあるが、それがギリギリ我慢できる範囲でそれ以上は絶対嫌だからな、というのがエルの主張だ。
 ただ今回はレイリースが体調不良でカリンが昨日から外出中――という事で仕方なくエルが行くしかなくなった訳で、それでもとてつもなく気が進まないエルを一押しするセイネリアの言葉もあって決断したというのがある。
「明日の謁見は少し遅れていく。そうすれば謁見の間でのやりとりなしで勉強中のシグネットに顔をだしていくだけで済むからな。ま、お前も一度くらいシグネットをちゃんと傍で見てみるといいぞ、なにせ外見だけならまさに子供のシーグルだ」
 シーグル、つまりレイリースは現在のエルにとっては可愛い弟である。お兄ちゃんとして構ってやりたいエルにしてみれば、子供版シーグルなんて言われたらそりゃちょっと見たいなと思ってしまうのは当然である。一応会場警備やらの仕事で遠目では王陛下を見た事はあるものの、あまりちゃんと本人を見た事がなかったエルとしてはその言葉にはかなりぐらっときた。
 だから今回、城行きを引き受けたのだが……。
 セイネリアが言っていた通り、わざと遅れて行ったために朝の謁見の時間は終わったらしく勉強中の王様の休憩時間を待つことになったのはまぁ、正直ほっとした、のだが。やっぱり城に入れば高い天井やら煌びやかな装飾の中貴族と兵士ばかりがウロついている訳で、しかも皆セイネリアが近づけば緊張して頭を下げてくる。セイネリアは慣れたモノで無視しているがエルとしてなんだかすごく場違いでいたたまれない。
 長い廊下を抜けてようやく中庭まで出て周囲の目がなくなってほっとしたが、いや俺はやっぱこういう役はぜってー無理だわーと改めて実感した。
「あー……疲れたわ」
 中庭の東屋に座ったセイネリアはそのぐったりした様子のエルをみてニヤニヤと笑っていやがってくれた。
「俺の後ろにいるだけで緊張するのか?」
「るせー雰囲気だよ雰囲気。城って言ったら貴族様と偉い連中の総本山だろ。空気っていうか見た感じっていうかこーゆーのがなんかもう嫌なんだよ」
 セイネリアは笑っている。相変わらずの性格の悪さだなんて思っていたら、そこへ大きな声が聞こえてきた。
「しょっおーぐーん」
 まだ少年らしい少し高い声にエルが振り返れば、そこには嬉しそうにこちらへ走ってくる銀髪の少年の姿があった。
――うっわ、かっわいいなぁ。
 への字に曲げられていたエルの口元がぐにゃりと緩んだ。

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