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■最強とは?■(2/3)※ランダム表示
(続編の最後まで読んでる方でないとちょっとネタバレになります)

 側近であるシーグルが体調不良でカリンが外出中という事で、今回将軍セイネリアが登城するにあたってその付き添いにはエルがやってきていた……のだが。
 現クリュース王、シグネットは12歳になっていた。さすがにこの歳になると言葉は普通にしっかりしているし、自分の地位に対する自覚もめばえ、勉強も進んでいるからいかにも子供子供している事はない……とは聞いていたのだが、勉強時間が終わってやってきた少年は子供らしくはしゃいで走ってきた。
「わーい、将軍~、やっぱ将軍は分かってるよなぁ、わざと時間外してくるあたり♪」
 この国で一番恐れられている将軍閣下の背中に無邪気に抱き付いていくこの国の国王陛下。
「ねーねー、今日は俺の剣見てくれるの? レイリースはまだ……ってあれ、今日はレイリースはいないんだ?」
 猫のようにセイネリアにじゃれついているこの国の王を見ていたら、なんていうかエルはもう口元がにやけっぱなしでヤバかった。とびきり整ったシーグルとそっくりなその姿が全部ミニチュアサイズに落ちて、更に子供の無邪気さが加わったら最強じゃねーかなんて思ったりする。
 レイリース(シーグル)はエルにとっては今では可愛い可愛い弟だが、彼は基本自分に厳しいから自分の事は自分でやるし、超が付く程の真面目さと、いろいろ難しい人生を送ってきた故の苦労があるからまずこんな無邪気な顔なんてしない。セイネリアからは『十分お前に甘えてるぞ』とは言われているが、やはり基本的にしっかり者だからエルとしてはちょっと寂しいところも多々あったりする。
 その彼とほぼ同じ顔が子供らしい屈託ない表情で嬉しそうに笑っていたらそれはもうエルに笑うなというのは無理だ。
 もともと子供の面倒をよく見ていて子供好きなエルとしては、持て余した手を思わずわきわきと動かして『構いたい』という気持ちを抑えるのに必死だった。
 だが、そんなところでその子供版レイリースの顔が急にエルに向けられた。
「えーと、そっちの人は……レイリースの代理、なのかな?」
 正面から見ると大きな瞳はレイリースよりも明るい青色で、その色のせいか全体的に持つ表情の雰囲気も明るい。何よりキョトンと首を傾げてこちらを見てくるなんて表情、レイリースはまずしてくれない。
「あぁ、これでも実務面ではウチのナンバー2だぞ」
「これでもじゃねぇっ」
 ……と、思わずいつものノリで突っ込んでから、国王陛下の前という事にエルは気づいて慌てて背筋を伸ばした。
「失礼しました、国王陛下、将軍補佐のエルラント・リッパーと申します」
 そうして急いで頭を下げれば、無邪気な表情の子供の顔が変わった。
「そうか、ならばこれからもよろし頼む。会うのは初めてだが将軍がそう言うならお前もさぞ優秀なのだろう。アッテラ神官というだけで相当に厳しい訓練を経てきたというのも分かるしな」
 大人びた顔で既に王らしく威厳ある態度でそう言われたから、エルは一瞬どう返そうかと固まった、のだが。
「……って人前なら言わなくちゃならないけど、今はそういうのナシでいいからねっ♪ これからもよろしくね、エルって呼んでいいかな?」
「は、はい……問題ありま……せん」

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆

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