一時Store(1) ( No.1 ) |
- 日時: 2007/09/23 10:30
- 名前: 天査
- CY591-10-02-07-01/12 ( No.173 )
日時: 2007/09/21 02:05 名前: カレン/ラファティー 参照: ジョフ大公国/公都前面陣地/第二防衛線
それは、唐突に始まった。尚も煙が燻る最外郭線から、黒山の様なオークの群れが這い出し、第二防衛線に殺到してきたのだ。
カレン・ケイスナルド率いるコーランド軽歩兵第六、第八連隊は、地平から湧き出る様なオーク達が彼らの前面に現れても、息を凝らしてただじっと機を待っていた。
唐突に、最初のオークの一団と共に、大きく地面が陥没した。フィリップとトーレンス率いる猟兵が、罠を発動させたのだ。
「今だ! 全力射撃!!」
カレンが大きく腕を振ると同時に、満を持して軽歩兵達は火矢を撃ち掛ける。炎の尾を引いた幾百もの流星が着弾すると共に、陥没に捕らわれたオーク共々、巨大な爆炎を吹き上げる。
「着弾位置を伸ばせ!!」
カレンの下知に、軽歩兵達は矢の着弾点を先に延ばした。炎に行く手を阻まれたオーク達の頭上に、鋭い矢が雨霰と降り注ぐ。
「成功だな」
カレンの隣に来たラファティーは、にやりと笑った。
「まだ序盤だ。オークどもがあの炎を乗り越えて来たら、乱戦になる」 「準備は出来てるさ。巨人でもが出てきた場合、左右からカタパルトとバリスタで挟撃する」 「今日は、何としてもこの陣地で持ちこたえるんだ。夜には、最終防衛線に後退するからな」 「判ってる。計画通りに進めるよ」
そうすんなり行くかどうか──不安が無いと言えば嘘になる。だが、既に彼らは選択肢の無い戦いに引き込まれているのだ。コーランドの軽歩兵達にとって、長い、長い一日となるのは請け合いだった。
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一時Store(2) ( No.2 ) |
- 日時: 2007/09/23 10:31
- 名前: 天査
- CY591-10-02-06-02 ( No.172 )
日時: 2007/09/15 20:30 名前: フィリップ/トーレンス 参照: ジョフ大公国/公都前面陣地/第二防衛線
「夜が明けたな」 「あぁ」
昨夜の激戦の名残が残る煤だらけの顔を、猟兵を率いる二人の指揮官フィリップと副官のトーレンスは見合わせた。
「どれ位やられた?」 「KIA四、WIA十一だ」 「以外と軽微に切り抜けられたな」
闇夜の激戦にしてはなぁ、とトーレンスは大きく息を吐く。
「混戦だったからな。だが、今晩からはそうもいかないだろう」 「あぁ。奇襲効果は期待できないからな。攪乱戦だと、各自の才覚に任されるからな」
トーレンスは肩を竦めた。
「努力してこなかった奴は、これが年貢の納め時にある」 「そうだな」
二人とも、自分たちが率いる猟兵にそんな輩がいないのは百も承知。これは、いわば二人の間の“お約束”の様な会話だった。
今宵、誰が倒れるか判らない。だが、誰が倒れても、彼ら猟兵は絶対に引かない──その意志を、二人は儀式の様に言葉で交わしたに過ぎない。
そう、自分が倒れても──猟兵達は一歩も引かずに、任務を全うするだろう。そんな誇りをも、感じさせる言葉だった。
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一時Store(3) ( No.3 ) |
- 日時: 2007/09/23 10:31
- 名前: 天査
- CY591-10-02-06-01 ( No.171 )
日時: 2007/09/11 05:37 名前: カレン/ラファティー 参照: ジョフ大公国/公都前面陣地/第二防衛線
★★★ シーン転換:第二防衛線 ★★★
「夜が明ける」
公都前面の第二防衛線の塹壕にも、東の地平からの最初の陽光が差し込んでくる。
「最初の夜を乗り切ったな」 「あぁ。それも、最低限の損害でだ」
カレンは悴んだ両手を擦り合わせた。 北、西、南と周囲を山脈に取り囲まれたジョフは、修繕の月(十月)に入ると、朝方は大分冷え込んでくる。 ラファティーはカレンの隣に立つと、にやりと笑った。
「何か可笑しいか?」 「いや、冷えるな、と思ってな」 「平気だ。」 「ほぅ?」
きっぱりと言い切ったカレンに、信じがたいな、と言う表情を浮かべるラファティー。それが、何時もの通り、カレンの疳に障った。
「信じていないな?」 「信じて欲しいのか?」 「お前だって、寒いだろうに」 「あんたの話をしてるんだが?」 「やせ我慢をするな」 「している様に見えるのか?」
我慢してるのはあんただろうに、とラファティーは苦笑した。何時もの通りの、たわいない遣り取りである。
「・・・まぁいい」
諦めた様に、カレンはため息を吐いた。不毛な話題を変えてみる。
「兵達はどうだ?」 「夜通しだからな。多少の疲れが見えるな」 「中隊単位で、多少の休息を取らせよう。いざと言う時に、疲労で動けないのでは困る」 「判った。その様に取りはからおう」
ちょっと行ってくると言って、ラファティーは立ち去った。
「・・・」
無言でカレンは、昨夜相手を迎撃した最外郭線を眺めた。昨夜の名残か、うっすらと煙がたなびいている。
「今晩が山場か・・・」
眉根を寄せると、カレンは呟いた。
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