CY778-08-01-07-01 ( No.1 ) |
- 日時: 2003/11/04 06:10
- 名前: ギャラハッド/ルーン
- 参照: 七つの塔の城/本館3F/中広間
- 『七つの塔の城』(SEVEN TOWER'S CASTLE)
その巨大な城塞は、一般にそう呼ばれていた。元は別の名称だったが、特徴的な七つの塔に因んで、新しい城の住人からそう呼称されていた。“深淵なる湖”ニル・ダイブ南岸、セリンタン河の流出口近くにこの『七つの塔の城』はあった。そして、この城こそフラネースに新たに誕生した汎国家騎士団『守護騎士団』(THE KNIGHT WARDENS)の根拠地なのである。
コモン歴700年代。既存世界の全力を挙げて人と未来を贖う為、封印より復活した『暗黒邪神サリズダン』との大戦役『暗黒戦争』の後、各国は自国のみでは対処しきれない事態に対応する必要性を痛感した。この結果、エルディ連邦(GKD+ニロンド)、ヴェロンディ連合王国(フリヨンディ+ヴェルナ)、シェリドマール連合(コーランド三カ国、ユーリック三カ国、ヨーマンリー)、グレイホーク市の各勢力が中心となって、共同で世界治安にあたる精鋭部隊の創設に踏み切ることになった。これが、コモン歴779年に設立された『守護騎士団』である。その初代騎士団長には、『暗黒戦争』で暗黒邪神サリズダンを昇華させる原動力ともなった、テリウス・ライサンダー卿が就任。その麾下には、『暗黒戦争』を戦い抜いた歴戦の騎士が副団長として騎士団に属する騎士戦力の直接指揮に当たっていた。ルーン・エリシス・リュシリエン、カーラ・ナイトランド、デーゲンハルト・v・シュトロハイム、ギャラハッド・アドラー、カーシャ・ラダノワ、フェリックス・バートラム・v・ルックナー。何れも一騎当千のそうそうたる顔ぶれである。彼らの配下には各国供出の騎士240騎と、全て志願兵からなる歩騎混成部隊が7個連隊があった。何れも高志気・高練度の精鋭で、紛争に対して常に即応体制を維持していた。
☆ ☆ ☆
さて、そんなある日のこと。朝からしとしとと雨が降っていた。窓から眺める深淵なる湖もけむるようだ。城の本館3階にある中広間には、一人の女性──その服装から高位の騎士であることがわかるが──が窓から物憂げに外を眺めていた。銀糸のような波打つ髪を背中に纏め、細身の鉾(ほこ)を腰に下げている。
「……」
小さく溜息をつくと、渋面を作る。そんな時、温厚そうな青年が広間に入ってきた。
「おや、ルーン、おはようございます。今朝は早いですね」 「…」
どこか間延びしたような言い方に、横目でジロリと睨む。だが、青年はそんな目線にも動じず、にこやかに話し続ける。
「ルーン、朝食はとられましたか? まだなら、御一緒しませんか?」 「…おはよう。目が覚めただけだ。まだだ。構わない」 「それは、よかったですね」
天の邪鬼で奇天烈なルーンの反応は、今に始まったことではない。だが、そんな対応に慣れっこ(笑)になっている青年は笑みを絶やさない。張り合いのない相手の態度に肩を竦めると、ルーンは諦めて広間の中央のテーブルに座った。
「はい、どうぞ」 「あぁ…ありがとう」
紅茶の良い香りが漂う。カップを手にとって、そっと口をつけるルーンを、黙って青年は見守る。
「…なぁ、ギャラハッド」
やがて、ルーンは重い口を開いた。
「はい」 「いや…世の中、以前は考えられぬほど平和になったな…そう思って」 「そうですね。悪が滅びたとは言いませんが、大分危険性は減少したと思います。それもこれも、ルーンさんたちが全身全霊を挙げて頑張ったお陰ですよ」 「…そう…なのか…」
コポコポと紅茶を注ぐ音が響く。
「…思うのだ…。本来で有れば、わたしはこのような場所に居られなかっただろうと。“書を守る者”として、闇にその身を寄せていたのだ。だから…こんな日々に在ることが、ピンと来なくてな…」 「そうですか…」
普段は冷酷と言えるくらい冷静なルーンにしては、弱気な発言だった。表情に暗い影をまとわりつかせたまま、ルーンは自嘲気味に言った。
「ふっ…言ってどうなるものでもない、とはわかっているのだが…」 「いいえ。」
思いがけず、強い口調を耳にしたルーンは驚いたようにギャラハッドの顔を見た。
「ルーン。確かにあなたは“書を守る者”でした。しかし、あなたは自らの力でその“闇の輪廻”を断ち切った。心の声を聞き、その導くままに生きようと努力しているあなたを、誰が咎めることができましょうか」
ゆっくりと、しかし言葉に力を込めてギャラハッドは労るように言った。
「…そう、か…」 「えぇ。ルーン、どうどうと胸を張ってください。あなたは、自らの意志と努力で、それを勝ち得たのですから」 「……」
心が、少し軽くなった感じがした。ふぅ、と大きく息をつく。
「…すまない、愚痴だ。忘れてくれ」 「いいんですよ。私で良ければ、いつでも聞かせてください」
にっこり笑うギャラハッドに、ルーンは柔らかい暖かみを胸の奥に感じた。
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CY778-08-01-07-02〜05 ( No.2 ) |
- 日時: 2003/11/04 19:56
- 名前: テリー/ギャラハッド/ルーン/ディーノ
- 参照: 七つの塔の城/本館3F/中広間
- 「おはよう」
穏やかだがよく通る声をともなって赤髪の青年が広間に表れた。連合騎士団筆頭騎将にして団長のテリウス・ライサンダーである。テリーはゆるやかな足取りで中央のテーブルに歩み寄りながら、穏やかな表情でギャラハッドに話し掛けた。
「いい匂いだ、オレにも一杯もらえるかい?」 「あ、テリーさん。丁度良いところに来ましたね」
にっこり笑うと、ギャラハッドはテリーの為に新しいカップに紅茶を注ぐ。
「そのようだな」
ギャラハッドの和やかな声に朗らかに答えて、テリーはテーブルに付いた。
「……」
突然の闖入者に、ルーンは自分の機嫌が急降下していくのを感じていた。黙って紅茶を一口含むとカップを置く。眉間に浮かんだ縦皺は、今やすっかりルーンのトレードマークになってしまっているが、今朝は特にそれが目立つようだ。ギャラハッドの微笑みのような穏やかな香りが口の中に広がるのを感じてため息を漏らすように呟く。
「ん…、あ、ありがとう。ふぅ…、美味いな、お前の入れてくれるお茶は…。雨の憂鬱さも洗い流されてしまうよ…」 「それは、どうもありがとうございます」
テリーは笑顔越しのルーンの様子を怪訝に思いながらも差し出されたカップに手を伸ばす。そんな時に、戸口から声が飛んだ。
「珍しいな、こんな時間に。雨が降ってるのはそのせいか?」
軽口を叩きながら近づいて来たのはディーノだった。どうやら、どんな天気でも欠かさず行っているランニングを終えた後のようだが、濡れた身体を拭きながら入ってくるところを見ると、外は雨が降っているようだった。“やはり湿気が身体にまとわりつくせいか、時間が多少掛かるな…”などと考えながら中広間に入ってくると、こんな時間にはあまり見かけない面々が目に付いた。
「なんでもかんでもオレのせいにするな。このハッキリしない雨に憂鬱にさせられてるのはお前だけじゃないんだぞ」
デイーノのゴアイサツに、テリーが静かな口調で答える。
「単独指名したつもりは無いんだが、そんな反応するとこを見ると、前に『雨男』呼ばわりされたことでもあるのか?」 「おはようございます、ディーノさん。朝練はお済みですか?」 「いや…ランニングが終わっただけだ」
ギャラハッドの言葉に、ディーノは軽く溜め息をついて言った。
「普段からきちんとしてないとマッケンゼンがうるさくってな…この後は剣術の鍛錬だよ…」 「そうですか。それは、大変ですね」 「という訳で稽古場に行ってくるわ」
そう言いながらも、ディーノは不機嫌な様子で座っているルーンの表情をチラッと見るとすぐに視線を戻して短く言った。
「悪かったな、朝のティータイムを邪魔して」
クルッと振り返り広間を出て鍛錬場に向かった。
「あ、ディーノさん…って、行ってしまわれましたか。真面目な方ですからね、ディーノさんは。たまに、息抜きされても宜しいのでは? と思うこともありますけれどね。まぁ、シャインさんが徐々になんとかされるでしょうけれどもね」 「言うだけ言って行っちまうのか…、慌ただしいヤツめ…」
テリーは片眉をあげて、早足に去っていくディーノの背中を視線で追って嘯く。そんな光景に軽く溜息を付くと、ルーンは立ち上がった。
「失礼する」
短く言うと、戸口を抜けて中広間を出ていった。
「もう少し周りに対する気配りってヤツを…、えっ! 」
つづいて席を立ち、取りつくシマも無く部屋を出て行くルーンにテリーは小さな驚きの声をあげる。
「お、おい、ルーンちょっ…、行っちまった…」
あっけにとられた表情を浮かべてギャラハッドに問う。
「オ、オレなんかマズいコト言ったかな…?」
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CY778-08-01-07-06〜08 ( No.3 ) |
- 日時: 2003/11/13 00:59
- 名前: ルックナー/テリー/ギャラハッド
- 参照: 七つの塔の城/本館3F/中広間
- 燃えるような紅い髪。不適な笑いが浮かぶ精悍な表情。細身ながら、鉄の様に引き締まっている身体。GKDが誇る4騎将が一人、バートラム・v・ルックナーは陽気に歌を歌いながら廊下を歩いていた。
「♪う〜ちゅうで一等 つ〜よいヤツぅ〜 それはお前だ〜 ルックナァ〜♪」
すると、この時間にしては見掛けない顔が前方から接近してくるのが目に入った。
「おんや? ルーンじゃないか。お前にしては早い…」 『ボグッ!』 『ぐはっ!!』 拍車を鳴らす足音が遠ざかっていった。その音は、多分な苛立ちを含んでいる様にも聞こえた。 「…お、オレが何かしたのか?」 大きなたんこぶをこしらえた頭をさすりながら、ルックナーは唖然としてルーンの後ろ姿を見送った。
「なにが何だか、全くわからんが…ルーンのヤツ、いきなりグーで殴ることはねぇだろ。まったく、今日は“あの日”ってか…。おっと、テリーにギャラハッド、おはようさん」 「あ…、オ、オッス。どうした?」
唐突に広間に入ってきた“フェスティバル”に気圧され気味にテリーが答えた。その当人はと言うと、そのままどっかり椅子に腰掛けると廊下を親指で示した。
「おい、聞いてくれよ。そこでルーンに会ったんだが、あいつ朝っぱらからもの凄く機嫌が悪くてよ。挨拶をしたとたん、グーでぶん殴りやがったぜ。あいつ、なんかあったんか?」
ルックナーの話す廊下でのできごとを、釈然としない表情で聞くと困惑に満ちた口調で問いを返す。
「いや、そのまったく…、で、ギャラハッド、そのなんかマズいトコあったかな?」
テリーの口調は、情けなくも、最後は救いを求めるようなものになっていた。
「ルーンさんも、いろいろお悩みなのでしょう。ちょうど、私がルーンさんから相談を受けていたときに邪魔が入った格好となってしまったので、不本意に思った感情が、まぁ押さえきれなかったのかと…」
腕組みして、うんうんと分別くさく頷くギャラハッドの言葉に、素っ頓狂な声を上げるルックナー。余程驚いたのか、椅子を蹴倒して立ち上がっていた。
「“あの”ルーンが“悩み”だってぇ?! デリケートっちゅーか、バリケードって感じじゃねぇか?」 「…バートさん。その一言で、少なくとも三回はスティックス河が無料で見られますよ」 「言い過ぎだぞ、ルックナー。オマエにだって悩みのひとつくらいあるだろ? それをチャカされたりしたらどうだよ? アッタマくんだろ?」
ちょっと呆れたように嘆息するギャラハッドに唱和するように、テリーも語気は荒くないものの、少し怒ったような口調でピシャリと言った後静かに続けた。
「確かに、ルーンさんはほとんど感情を見せませんし、いつも非常に冷静です。そのイメージが、ルーンさんを近寄り難くさせてしまっているのですが、実際は非常に細やかで繊細な女性ですよ」 「あ? うむ…そうだな。すまん、失言だった」
ギャラハッドとテリーの糾弾に、ルックナーは非を認めて素直に頭を下げた。
“切り替えが早く、物事にこだわらないのがバートさんの良いところですね。まぁ、いきなりルーンに殴られたのだし、これであいこですか”
「…にしても、そうか…。ルーンにはすごい悪いコトをしたな…あやまらなきゃ…」
テリーもまた、シュンとした表情で呟く。
「なあ、ギャラハッド。ルーンの悩みって…」
意識してか、してないか──ギャラハッドの思惑は分かり難かった。今回も、にこにこと笑って立ち上がると、二人に事無げに言う。
「では、失礼して私はルーンのフォローに回ることに致しましょうか。おや、来客でしょうか?」
丁度その時、当直の騎士が現れると、二人の客人が城に到着した旨を報告した。
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CY778-08-01-07-08A ( No.4 ) |
- 日時: 2004/01/18 01:18
- 名前: ユリウス/カーライル
- 参照: 七つの塔の城/大手門
- そぼ降る雨の中、いつもの荷馬車隊が到着する。巨大な城塞を維持するため、定期的に生活物資を搬送してくる補給部隊だ。城門のところで検閲を受けると、次々と所定の搬入口に向かって行く。そんな荷馬車の一台、その荷台から、長身のがっしりした人影とそれに寄り添うように小さな人影が大地に降り立つ。長身の方は壮年と思しき男性で、いろいろな仕事道具と思われる荷物を抱えてはいたが、腰には剣を佩き、旅なれた冒険者だということが見て取れた。御者と軽く挨拶をかわすと、隣に視線を走らせる。横に立つのは、雨よけのフード付マントを羽織っているのでよく分からないが、まだうら若い感じの女性であった。彼女の方も御者に礼を述べているのであろう、声をかけると、御者は大袈裟な身振りでそれに応える。旅は道連れ世は情け、との言葉通り、どうやらここまでの道を2人は御者の親切により相乗りしてきたようだ。御者は爽やかな挨拶とともに別れを告げ、本来の仕事に戻っていった。そして、2人はかねてよりの目的地、彼らの友人たちのいる7つの塔の城塞にたどり着いたのだった。
「気持ちのいい人だったね」
ユリウスはカーライルに声をかけた。
「えぇ。ほんとうにそうね」
笑顔を浮かべて、カーライルは応えたる。復興する街から街へ、村から村を旅して、ここまで来たのだった。その旅もここで終わった。途上、様々な人々の生活や人生模様を見聞きしたりもした。ちょっとした出会いと別れがあったりもした。波乱に満ちてはいなかったけれど、それはそれで充実した旅路であった。これが次なる冒険のプロローグとなるのかどうか。
2人は互いに到着したことを確認するように、巨大な城塞に目を向ける。
「テリーやディーノはここにいるのか…どんな状況になっているのかな」
彼はそうつぶやいたが、まあ雨の中に立っていてもはじまらない。
「…さあて、行こうか」 「はい…」
本館と思しき建物の方に向かって、ゆっくりと歩みだした。
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CY778-08-01-07-09 ( No.5 ) |
- 日時: 2004/01/18 01:45
- 名前: ギャラハッド/テリー/ルックナー
- 参照: 七つの塔の城/本館3F/中広間
- 「テリーさん、バートさん。ユリウスさんとカーライルさんがいらしたそうですよ」
警護の騎士の報告を聞いたギャラハッドが振り返って言った。
「え? あの2人か? 久しぶりだなぁ」
テリーは即座に客人二人を中広間に通すよう騎士に指示を出す。うれしい不意打ちに、その言葉にも気持ちが表れていた。
騎士が部屋から立ち去ると、ふと俯いた後に瞳をあげ申し訳なさそうな表情でギャラハッドに相談をもちかける。
「ギャラハッド…、お前も2人に早く逢いたいだろうけど、頼まれてくれないか…」
切り出す口調は低く、続ける表情は重い。
「ルーンの話も聞いてあげたいし、謝りたいけど…きっとオレが今行くよりも、いや、お前が一番心底解ってやれる問題じゃないかと思うんだ…どうだろう? 遅いかもしれないけど、追いかけてってくれないか…」 「では、失礼してルーンのフォローに回ることに致しましょう。テリーさん、バートさん。ユリウスさんとカーライルさんのお相手、お願いしますよ」
釘を差しておくことを忘れないあたり、ギャラハッドも細やかである。
「それでは、またのちほど」
会釈をすると、ギャラハッドは部屋を出ていった。
「ありがとう、頼んだよ。こっちは任せてくれ」
ギャラハッドの返事に熱っぽく感謝を述べると、細心の配慮に対して頷いて答える。退出していくギャラハッドを視線で追いながら、 ルックナーにしんみりと呟く。
「オレは幸せだな…、気持ちのいい仲間達に恵まれて…」 「そうだな」
珍しく、真摯な口調で相づちを打つルックナーだった。
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CY778-08-01-07-10 ( No.6 ) |
- 日時: 2004/01/18 01:44
- 名前: ギ/テ/ル/ユリウス/カーライル
- 参照: 七つの塔の城/本館3F/中広間
- 丁寧に応対してくれた騎士に案内されてユリウスとカーライルが中広間に踏み込むと、そこには懐かしい顔がそろっていた。なんとなく面映い感じで、目を細めてユリウスは相手を見た。テリーにルックナーだ。
「やあ…本当に、久しぶり」
何か気の利いたことを言うつもりだった気もするが、実際はそう言葉にするだけで、自然と身体が動いてユリウスは2人に握手を求めていた。
「すまないけど、ちと厄介になりに来たよ。彼女と一緒にね。無論、仕事道具も持参してきたから、自分らの食い扶持分くらいは働くつもりだけど」 テリーは破顔して前に歩を進めると、差し出されたユリウスの手をしっかりと握った。
「ああ、久しぶりだ。元気そうでなによりだ。『ちと』なんて言わず。ゆっくりしていけるんだろぅ?」
テリーは和やかな笑顔で歓迎の言葉を述べると、ユリウスとカーライルを気遣うような表情で続ける。
「雨で旅も大変だったろ? 我が家だと思って寛いでくれよ」 「ありがとう、テリー。そちらも元気そうでなにより。なにか、随分と余裕が出てきたような気がするよ。久しぶりに会ったせいかな?」
テリーの手をしっかりと握り返してユリウスはそう応えた。
「こんにちわ、ライサンダー卿さま、ルックナー卿さま」
丁寧に頭を下げて二人に挨拶すると、カーライルはユリウスの傍らに笑みを浮かべて静かにたたずんだ。別世界である『アシャンティ』から来たカーライルにとって、この世界は習慣も、対応も、多少異なるところがあることを感じていた。この世界の常識に少し疎いカーライルは、失言でユリウスの足を引っ張らないように、普段からあまり話さなかった。
「…」
続いて横で挨拶をするカーライルを見つつ、ユリウスは少し心配そうな表情を浮かべた。道中は随分とリラックスしていたように見えたのだが。
「よっ、ユリウスにカーライル。元気だったかい?」
豪快な笑みを浮かべて挨拶するのは、ルックナーのトレードマークでもある。
「ところで、オレが聞くのも変だが…。ここに何しに来たんだ?」
そのルックナーの挨拶に応えようとしたが、付け加えられた言葉に絶句した。
「その疑問、当然とは思うけど、いきなり核心を突いてくるなあ…さすがルックナー」
とユリウスはヘンな感心の仕方をした。とはいえ、率直に聞かれたら率直に返すのが流儀というものだろう。ちょっと考えて、ユリウスは答えた。
「皆を冒険に誘いに来た、というところかな」と答えた。
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