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◆[CY585]魔性の瞳
日時: 2009/11/23 05:37
名前: ×書込制限:NRPS参加者のみ

★★★ 「魔性の瞳」 ★★★

■これまでのあらすじ

このNRPSは、基本的には「コモン歴585年の世界」を舞台にしています。この時代、ヴェロンディ連合王国は成立したばかりで国力が弱く、北の魔国と苦しい戦いを続けています。イースタン諸国の大同団結は漸くその兆しが現れたばかりですが、漠羅爾新王朝諸国との連携はまだありません。全土に、暗黒邪神の影が忍び寄っており、重苦しい世の中です。

そんな中で、「封印戦争」に向けて重要な絆の一つが偶発的に生じました。“阿修羅”を帯びる魔剣士エリアドと、“夢見姫”と呼ばれるレムリアとの出会いです。その出会いは、コモン歴585年に、ヴェロンディ連合王国の王都シェンドルにて、王国主催の宮廷舞踏会で起こりました。そして、このNRPSは二人の出会いの少し前からの話です。

“魔性の瞳”と忌み嫌われたレムリアは、ヴェロンディ十六公家の一つである、ヴェルボボンクのウィルフリック子爵に預けられました。そして、レムリアが十七になった誕生日に、兄王アーサーの戴冠式に呼ばれ、レムリアは故国ヴェロンディに戻ることになりました。しかし、レムリアを待ち受ける故国の状況は、彼女が国を離れた二年前とほとんど変わっていませんでした。相変わらず、白い目で見られ、周囲から敬遠されるレムリアですが、義兄のアーサーがヴェロンディ国王になったことから、政略の道具としても狙われることにもなりました。レムリアの苦難の日々は、当面続きます…。

■現在の主要登場人物

☆ エリアド・ムーンシャドウ
 『創世の魔剣』と呼ばれる『阿修羅』を帯びる“魔剣士”。ヴェロンディ連合王国の自由騎士位を有する。
☆ マーガレット・レムリア・オフ・ヴェロンディ
 ヴェロンディ王アーサーの妹姫で、希代の“夢見”の力を有している。だが、その漆黒の瞳は“魔性の瞳”と呼ばれ、一般に忌み嫌われている。
☆ アーサー・アートリム・オフ・ヴェロンディ
 再興されたヴェロンディ連合王国の国王。レムリアの腹違いの兄。
☆ アン・コーデリア・オフ・ヴェルナ
 アーサーの后。ヴェルナ法王の娘で、その母親はヴェルナ七大公家の一つであるルクハート家の出身。
☆ ヴァルガー・v・エルド
 ヴェロンディ連合王国の男爵。フリヨンディ七大公家の一つを統べる。レムリアの婚約者を名乗る。
☆ 夕刻斎
 金の仮面を付けた男性。
☆ アンヌ
 レムリアの侍女。レムリアに心から仕えている。
☆ フランツ・v・リヒター
 マーケットでエリアドと出会った若者。グレイト・キングダムの五大公家の一つ、リヒター家の長子。
☆ シュテファン・ラダノワ
 王宮正門の警護隊長。後に“魔導卿”と呼ばれる様になり、漠羅爾(バクラニ)新王朝ケットに移る。その孫が“紅い龍騎士”と呼ばれたカーシャ・ラダノワである。
☆ セイ・フロム・バーナード
 近衛騎士隊の隊長を務める女性騎士。ヴェロンディ三騎士の一人で、“Justice”とも呼ばれている。古代西方魔導の一つ『天秤』を使う。聖剣『ノルン』を帯びる。かってのヴェロンディ最強の騎士、『光の担い手』リスナル・リアンダーより『光の秘技』を受け継いでいる。
☆ ハリー・ハウ
 シェンドル駐留の近衛軍を率いる騎士。ヴェロンディ三騎士の一人で“Truth”と呼ばれる。守護の剣『ヴァンガード』を帯びる。
☆ アクティウム・エパミノンダス
 ヴェロンディ王室を護る最後の砦、ロイヤルガードを率いるヴェロンディ三騎士の一人で“Ruth”と呼ばれる。王国最強にして最も高潔な騎士との名も高い。光の三神器の一角、神槍『カラダン』を担う。
☆ 契那
 エパミノンダスの養い子。常に、エパミノンダスと一緒に行動している。
☆ラ・ル
 エルド男爵の客人として王都に逗留している貴人。

■注意事項

これは「3i-NRPS」専用です。このスレッドには、このNRPSシリーズに参加している方のみが書き込み出来ます。御了承下さい。

■お知らせ
 「魔性の瞳」は、下記にネット掲載中です。

 http://ncode.syosetu.com/n7936e/

[最終更新:上記日付の通り]
メンテ
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CY585-Needfest-06-02-10 ( No.272 )
日時: 2008/06/23 05:15
名前: 黒衣の影
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

それは全く不意打ちの様だった。余りにも圧倒的な“氣”が爆発的に生じた。強大なその“氣”は、圧力を増しながら大聖堂に近づいてくる。

程なく、その“氣”を発する者が顕れた。ゆっくりと、大聖堂の扉を目指し、恐怖を引き起こす三つの影が回廊の奥に顕れた。

比較的小柄な黒衣の人物を、二つの巨大な黒衣が挟んでいる。徐に、その強大な影がそれぞれの得物を引き抜いた。それは、見るだけで恐怖を覚える長大な両手剣と、凶悪な両頭の大戦斧だった。

■追記
配置ですが、中央大聖堂扉前にエリアド、右の回廊から三つの黒衣が横一列で接近中。左の回廊は無人です。中央扉の前は半円状の広場状のスペースになっています。10人位は楽勝で戦えます。
メンテ
CY585-Needfest-06-02-11 ( No.273 )
日時: 2008/07/05 07:27
名前: エリアド
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

回廊の奥に現われた相手がドレッドロード、・・・いや、あるいはそれ以上に強大な“力”を持つ者かもしれぬということは感じられたが、この者たちを相手に“阿修羅”を抜こうとは思わなかった。

なぜなら、さきほどの相手と異なり、この者たちはまだこの世の“理(ことわり)”のうちにある存在だと感じていたからだ。“阿修羅”は、いかに強大な“力”の持ち主であろうとも、この世の“理(ことわり)”の内にある者と戦う時に使うべき剣ではない。

──とはいえ、ドレッドロード以上に強大な“力”を持つ相手が三人ということになると、私一人ではいささか分が悪いと言わざるを得ないことも事実だろう。いや、一人でさえ、まともに相手にできるかどうか。だが、それでも“阿修羅”を使うわけにはいかなかった。

しかし、この時の私には、まだ“雷電”も、また“震電”もなく、彼らの“力”に対抗し得るかもしれぬ唯一の可能性は、“炎の鎧”と“双炎剣”のみであった。

「・・・エリアド・ムーンシャドウの名において、“正義”を為さんがため、我は“汝”を求める。・・・“双炎剣”よ、我がもとに。」

巻き上がった真紅の炎とともに、二振りの細身の漠羅爾刀が手の中に現れる。

「・・・何者か?」

強大な“気”を放ちながら近づく三人に、私は静かにそう問うた。
メンテ
CY585-Needfest-06-02-12 ( No.274 )
日時: 2008/07/09 06:09
名前: 黒衣の影
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「・・・」

 漠羅爾の聖宝『大地の鎧』が一つ、“炎の鎧”──創世の杯と護符の加護を受けたその力は、炎の荒ぶる力そのままに燃え上がる。

「・・・」

 だが、何をにも気を取られる事も無く、三つの黒衣の影は着実に近づいてくる。長く伸びるその影から、今でさえ強大な圧力がいやが上にも増していく。

『シャリィィィン』

 今まで、ただ無言で歩を進めてきた真ん中の小柄な黒衣が手にした錫杖が、澄んだ音を立てた。瞬間、その黒衣の影の足下から、四方に闇が放たれた!
メンテ
CY585-Needfest-06-03-01 ( No.275 )
日時: 2008/07/23 07:58
名前: エリアド
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

“闇”が迫る。

迫る“闇”そのものに、私が“恐怖”や“脅威”を感じることはなかった。とはいえ、

──これだけの“気”を放つ者たちを相手に、はたして今の自分にどれだけのことができるだろう?

そんな迷いがまったく浮かばなかったと言えば、嘘になる。


『・・・天空に風。・・・大地に水。・・・人心に炎。』


私は静かに瞑目し、心の中で“聖句”を唱える。
自らの心を静めるために。迷いを迷いのまま、心に止めぬために。

そう、さきほどあのラ・ルという男と対峙して、私には一つわかったことがあった。

──“聖句”は“聖句”であるがゆえに“力”を持つわけではない。

はからずもあの男の発した“闇句”がそれを教えてくれた。

“聖句”は自らの“覚悟”を“覚悟”として、“決意”を“決意”として心に刻むことによってこそ、己の“力”を引き出し得る“鍵”となる。それは、己の“心”“技”“体”を磨くことによって、己自身の内なる“力”を引き出す『炎の鎧』の根源にも通じるものだ。

──ならば・・・。今の私にできることは唯一つ。己と己を支えてくれる“心”“技”“体”を信じること。

自らのうちにある“心”“技”“体”の三つの扉を押しあけ、それによって導かれる“力”を最後の扉へと導く。


『・・・我が想い“炎”となりて、我が身をまとえ。・・・我が元に来たれ、『炎の鎧』。烈火、招来!』


二振りの双炎剣に続いて、一際大きな真紅の炎が全身を包む。
古代漠羅爾(バクラニ)が聖宝『大地の鎧』が一つ、『炎の鎧』。


『・・・我、闇を照らす灯火とならん。』


私にとっては、それもまた“師”と交わした誓いの言葉。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-02 ( No.276 )
日時: 2008/08/02 06:54
名前: レムリア
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

強大な何かが、大聖堂の方向から迫っていた。精神が軋むような――それ程までに強い力が、更に容赦なく増していく。

“早く・・・もっと、早く!”

必死で走っているのだが、もどかしい程先に進まない。そうこうしている内に、全てが手遅れになるかも知れない。

最悪の予想が胸を過ぎる。

“惑わされは・・・しないっ!”

心を強く保ちながら、レムリアは先頭を切って大聖堂へと通じる回廊へ走り込んだ。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-03 ( No.277 )
日時: 2008/08/02 07:09
名前: 黒衣の影
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

闇は四条の稲妻のように、幾条もの軌跡を描いて周囲の空間を染め上げた。辺りは、瞬く間に漆黒の帳に包まれる。

そこには、いかなる光も無かった。

そこには、いかなる音も無かった。

そして――そこには、いかなる生命の息吹も感じられなかった。辺りの様相がまるで変化してしまったのだろうか。全てが、判然としない、深い闇に覆われていた。

■追記
周囲は全く見えません。明かりの類は、如何なる種類も光を放ちません。また、何も聞こえません。平面にたっていることだけは感じられます。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-04 ( No.278 )
日時: 2008/09/16 08:12
名前: エリアド
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

無明の“闇”があたりを支配する。一瞬、五感を奪われたかのような錯覚に陥るが、しかし私にはそうではないという確信があった。かつて“阿修羅”の持つ“闇”に呑まれようとした時、私は同じような状況に陥ったことがある。その時には、自分という存在を保つことさえ困難に思えたが、今はけしてそうではなかったからだ。

「・・・cogito, ergo sum.」

そう。私は今、確かにここに在る。ならば、これは“闇”であっても“虚無”ではない。

──そして、私は思い出す。

『・・・君は“闇”とは何か、考えたことがあるかな?』

それは穏やかで落ち着いた優しい声音。
かつて私がまだ最初の旅に出る前、ある人から聞いた言葉だった。
旅に出ることを決意するきっかけになった言葉でもある。

『多くの人は、漠然と「“闇”は存在する」と考えている。しかし、“光”が当たれば“闇”はそこから消え失せる。けしてどこか別の場所に移るわけではない。まるで最初からそこに存在していなかったかのように消えてなくなってしまう。言い換えれば、“闇”とは“光”が存在しない状態のことであって、“闇”と呼ばれる“何か”が存在しているわけではないという見方もできる。』

不思議な笑みを浮かべて、その人はこう続けた。

『・・・ならば、人はなぜ何も存在しないはずの“闇”に恐れを抱くのか、君にはわかるかな?』

「・・・すっかり忘れていたな。」 

私は小さく呟く。

わからなかったその問いの答えを探すために、私は旅に出る決意をしたようなものだ。
しかし、多くの困難に満ちた冒険行の中、いつしか問いそのものが記憶の奥深くに埋もれていた。
けれど、ずっとわからなかったその問いの答えが、不意にわかったような気がしていた。

・・・人が“闇”に恐れを抱くのは、おそらく“闇”の中では何も見ることができぬからだ。

見えぬことはわからぬことであり、わからぬことが不安を呼ぶ。
どんな人にも心の中に見えぬものわからぬことがあり、人はそれに不安を感じながら生きている。
なぜなら、人は他人の考えを知ることも、また未来を見通すこともできぬからだ。
それが不安を──“闇”を増大させる。
そして、計り知れぬ不安──“闇”は、やがて恐れとなる。
言い換えれば、人は“闇”を恐れるのではなく、見えぬものわからぬことを恐れているのかもしれぬ。

『・・・ならば、“光”とは何か?』 

あの人の声が聞こえたような気がした。

“闇”が恐れをもたらすと考えるなら、“光”は何をもたらすのだろう? そう考えれば、答えは簡単だった。
そう、“光”によって、人は“闇”から解き放たれ、そこに何があるかを知る。

星々と放浪者の神と言われるセレスティアンが宇宙(そら)の闇の彼方に何を求めて旅を続けているのか。

「・・・知は“光”なり──か。」

ずっと気づかなかった。答えはずっと自分のすぐ目の前にあったのに。

ならば、“闇”を──恐れを直視し、向かい合わねばならぬ。そして、恐れを──“闇”を直視するためには・・・。
きっと、あの人なら当たり前のように、ここに“光”を呼ぶのだろう。

私にはそんな風に思えた。

・・・だが。はたして自分に、あの人と同じように“光”を呼べるのだろうか?
あまり認めたくはなかったが、そんな“迷い”があるのもまた事実。そして、その“迷い”があるうちは、私に“光”を呼ぶことはできないだろう。

「ならば・・・。」

私は決意する。

古来、それは人間(ひと)が“闇”に抗するため、太陽(ひ)の光の代わりに求めたもの。
私には、“光”を呼ぶことはできぬかもしれないが、それを呼ぶことはできる。
それは、夜の“闇”に挑むため、人間(ひと)が手に入れた最初の武器。

今一度、決意を込めて、私は呼ぶ。

『・・・“炎”よ、来たれ。我が元に。』

そして──、紅蓮の炎が“闇”を明々と照らし出す。

■プレイヤー追記
ひさしぶりにあの人のことを思い出しました。あえて名前は出しませんでしたが。
自分ではわりとエリアドらしさをうまく出せたのではないかと思っているのですが、はたして。。。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-05 ( No.279 )
日時: 2009/04/20 01:36
名前: ハリー/セイ/レムリア
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

 レムリア、セイ、ハリーの三人を先頭に、六人の親衛王騎士が続く回廊の前方は既に闇に閉ざされていた。

「闇に閉ざされてるぞ!」

 ハリーが叫ぶ。

「抜刀して突撃するっ!」

 セイが聖剣ノルンを引き抜くと、その刀身から目映いばかりの白光を放つ。それは、先程の妖魔とは比較にならない程強大な悪意が存在する証だ。

「御敵覆滅っ!!」

 裂帛の気合いで聖剣を袈裟懸けに振るうと、セイは闇に突入した。
 一瞬遅れてハリーも守護の剣ヴァンガードを引き抜いてセイに続く。

「・・・」

 きつく唇を噛むと、レムリアは宝剣タインを握り直した。ザッと、そのレムリアの廻りを六人の親衛王騎士が取り囲む。

「行きます。」

 静かに言うと、レムリアは親衛王騎士に囲まれたまま、二人の後を追って闇に飛び込んだ。

               ☆  ☆  ☆

 漆黒の闇だった。視界は全く効かない。ただ、圧倒的なプレッシャーに、五感全てが麻痺するようだった。

 ハリーは腰を落とし、半身になってヴァンガードを斜め下段に構えるとじりじりと進んだ。
 五感が役に立たない今、頼りになるのは己の研ぎ澄まされた勘だけだった。
 周囲の“気”を慎重に探る。そして、その慎重な行動が、今際の一撃からハリーを救うことになった。

「!!」
『ギッギィィィンッ!!!!』

 手が痺れる程の剃刀のような連撃を間髪防ぐ。スワローカット――同時の攻撃をも、一撃で受け止める秘技だ。

“・・・首が飛ぶところだったぜ・・・”

 背中に嫌な汗が流れ落ちる。ハリーは勘を更に研ぎ澄ませた。

               ☆  ☆  ☆

 嫌が上にも目映く輝くノルンを両手で握ると、セイは呼吸を整えた。五感を奪われた闇の中では、先手を打つことが難しい。だが、カウンターならば判らない。ノルンを中段に構えると、重心を心持ち下へ――そこへ、重い一撃が来た。
 身を回しながら落とすことによって間髪その斬撃をやり過ごすと、一回転しながらその身を捻って剣を上段へ。そして、一気に流星のように振り下ろした。全て一連の動作で、一見不可能な重心移動による防御からの攻撃である。

「くっ・・・」

 だが、滅多なことでその的を外さない銀の軌跡は何をにも触れることなく空を切った。一瞬、乱れた呼吸を整えながら、セイは次の一撃を待った。

               ☆  ☆  ☆

“何も見えない”

 漆黒の闇に取り巻かれても、レムリアは何ら動じていなかった。闇を恐れる謂われもない――それは、夢見の鍛錬の賜だった。
 もっとも、レムリアは自分の白兵戦力がハリーやセイと比べて著しく劣っているのを知っていた。それでも、レムリアをここまで突き動かしたのは、その余りにも強大な悪意だった。

「・・・」

 自分の呼吸の音すら聞こえない。地面に立っているのかも判然としない。廻りを護衛している筈の親衛王騎士の存在は全く感じられない。唯一判るのは、左手に握ったタインの存在だった。
 ヴェスベの森の宝剣タイン。その守護の石より生み出された“金属ではない”刃を持つ剣――それは、護りに於いて絶対的な力を発揮する。
 レムリアは両手でタインを握りしめると青眼に構えた。セイやハリーに剣技を師事したのは伊達ではない。その剣先には、相手を両断する鋭さが宿っていた。

「・・・」

 レムリアはその双眸を閉ざすと、無我の境地で相手からの攻撃を待った・・・。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-06 ( No.280 )
日時: 2009/04/20 04:16
名前: レムリア
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

 周囲の闇が濃い。
 じっとりとした空気が重い。
 何も見えぬ中、五感を研ぎ澄ませる。
 ただ、感じるのは己が手にした暖かい力――守護の聖剣タインのみ。

「!!」

 とっさに動いたのは、無我の境地故だった。そして、その境地がこそ、『後の先』とも言われるタインの力を最大に発揮する。

『ザシャッ!!!』

 闇を、銀の流星が一条の弧を描いて天空へと走る。確実な手応えと共に、レムリアは闇を切り裂いた。霧が晴れるように、辺りに光が戻ってくる。

「・・・無我の境地、見事です」

 静かな声で、中央の小柄な黒衣の影が言った。ハリー、セイ、六人の親衛王騎士、そして自分――まだ、誰も倒れては居ない。
 左右の巨大な黒衣は、己が得物を納めていた。

「姫君は成長された様ですね。それはそれで、喜ばしいことです」
「あなたがたは・・・」
「今日はご挨拶のみ。近日中に、正式に参ることに致しましょう」

 シャリィィィン、とその錫杖が音を発すると、黒衣の三人の居る空間がグニャリと歪曲する。

「“黄昏の三騎士”と我らは呼ばれています。それではご機嫌よう、夢見の姫君・・・」

 三人の姿が消えると共に、周囲に掛かっていた強大なプレッシャーも掻き消えていった。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-07 ( No.281 )
日時: 2009/09/28 07:28
名前: ハリー/セイ/レムリア
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「・・・完敗、だな」

 ふぅ、と息を吐いてハリーが言った。疲れたような表情で、セイも頷く。

「認めたくはないが――見逃して貰った、ということか・・・」
「これで“ご挨拶”とは痛み入る。こっちは殆ど全力だったっていうのにな」
「是非も無い」
「不本意ではあるでしょうけれども・・・」

 労るように、レムリアが言う。

「生きてさえいれば、次の機会があります。理由はどうあれ、生き残ったことを喜びましょう」
「・・・そうですね。姫君の言う通りでしょう。素直に認めるには、我々は捻くれ過ぎていますがね」

 早くも調子を取り戻したハリーが、にっこりセイに笑いかける。

「お前と一緒にするな」

 不機嫌そうに言うセイも、少しはふっきれて来ているようだった。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-08 ( No.282 )
日時: 2009/09/29 02:14
名前: エリアド
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

不意に闇の向こうで剣の交わる音が響き、そして、挑むような闇の圧力が消える。
あたりにあるのは、もはや光に抗すべくもないふつうの闇だった。

『それではご機嫌よう、夢見の姫君・・・』

響いてくる声に私はゆっくりとそちらに向かう。
“大地の鎧”を彩る真紅の炎と共に。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-09 ( No.283 )
日時: 2009/10/11 04:14
名前: レムリア
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「エリアドさま・・・」

 足音の方にレムリアが振り向くと、鋼のような視線とぶつかった。

「お怪我は?」

 二三歩進むと、そっとその表情を仰ぎ見た。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-10 ( No.284 )
日時: 2009/11/24 02:01
名前: エリアド
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「いや、こちらは問題ない。・・・“彼ら”と直接刃を交わしたわけではないからな。」

 私は彼女(レムリア)の問いにそう応じる。レムリアはもちろん、セイもハリーも親衛王騎士たちも、一人として傷を負った様子はないように見える。

「・・・そちらはそうもいかなかったようだが、皆無事で何よりだ。」

 ・・・おそらく、“彼ら”の力をもってすれば、私自身を含めて、ここにいる者たちを打ち倒すのはそう難しいことではなかったはずだ。ならば、なぜ・・・

 微かな疑念がよぎる。

 ・・・“黄昏の三騎士”といったか。かの男(ラ・ル)の配下の者なのだろうか? 

 これまでの状況を考えればその可能性はけして低くはない、はずだ。・・・だが、私にはなぜか“彼ら”がラ・ルという男の単純な“配下”であるとは思えなかった。むろん、力関係の上下がまったくないわけではあるまい。・・・しかし、おそらく“彼ら”は“配下”というより、むしろ一時的な“同盟者”あるいは“共闘者”とでも言えばいいのだろうか。何かの目的のために同盟もしくは共に戦うことを選んだとでもいうような、そんな感じがしてならなかった。しかし・・・

「・・・ならば、“彼ら”はなぜここに来た?」

 小さな呟きが漏れる。

 ・・・まるで何かを確めに来たように思えるのは、はたして私の気のせいなのだろうか?

 私は、すでに消えた“彼ら”がこの場に残した意思を探るかのように、じっとあたりを見廻した。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-11 ( No.285 )
日時: 2009/12/27 08:24
名前: レムリア/ハリー
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「強大な力を持つ者達です。世界のバランスの為にも、無為に動き事は出来ないでしょう」

 淡々とした口調で、レムリアが言う。

「彼らがここに顕れたと言う事は即ち――ここに来る必要が有ったと言う事。そして、また立ち去ったと言う事は・・・」
「彼らが、その目的とする事を果たした、と言う事ですね」

 やれやれ、厄介事が倍増ですよ、とハリーがレムリアの言葉を引き取って言った。苦笑いを浮かべた表情を、一転引き締める。

「それは、取りも直さず姫様――貴女を知る為、と私には思えるのです」

 脅かすつもりは有りませんが、と言葉を結ぶ。
 少し硬い表情のレムリアは、静かに話し出した。

「・・・恐らく、ハリーの予想は正しいでしょう。わたしの心は、夢見にしてはまだ弱い――夢見として振るえる力と、心を制御する力は全く均衡していません」
「姫君・・・」
「いいのです、セイ。わたしの心の弱さが闇を呼び込む危険性を孕むのならば――わたしは、この都から去らねば成りません」

 決然とした表情を浮かべて、レムリアは顔を上げた。
メンテ
CY585-Needfest-06-03-12 ( No.286 )
日時: 2010/04/13 07:13
名前: エリアド
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「・・・あるいは、ハリー殿が感じたように、“彼ら”は君(レムリア)のことを知るためにここに来たのかもしれぬ。そして、もしそうだとすれば、『君が“夢見”だから』というのは、おそらく“彼ら”がここを訪れた一つの理由であるのだろう。」

 私はゆっくりと口を開く。

「・・・だが、“それだけ”だろうか?」

 少しだけ間をあけてこう続ける。

「・・・確証があるわけではないが、私はけしてそれだけではないような気がしてならぬ。もしただ単に君のことが知りたいだけであれば、過去にそうできる機会はいくらもあったはずだ。とすれば、何か“彼ら”が“今”という時を選んだ理由があるような気がしてならぬ。」

 そこまで言って、私はふと一つの可能性に気づく。そう、私がレムリアと出会ったことが、結果的に彼らの介入を招いた可能性があると考えるのは、いささか傲慢が過ぎるだろうか。むろん、私と彼女の出会いが良き結果を招くのか、あるいは悪しき結果を招くのかはわからない。だが、私と彼女が出会ったことによって、何らかの変化がもたらされるであろうことは、おそらく間違いあるまい。

 ・・・運命の女神(イスタス)よ。これは貴女(あなた)の意思だとでもいうのか。

 自分に問いかけるように瞑目する。

 ・・・いや。もし仮に、私と彼女の出会いが運命の女神(イスタス)に意図されたものであったとしても、私の中にこの出会いを後悔する理由は何一つない。ならば、少なくともそのことについて迷う必要はない。

「・・・あの“ラ・ル”という男にせよ、“黄昏の三騎士”と名乗った者たちにせよ、並みの者ではないことは明らかだ。どうやら我らは、我らが考えている以上に厄介な状況に陥っていると考えざるを得ぬようだ。」

 ・・・とすれば、我らはこれから如何に為すべきか。

 それは、けして容易には答えの出せそうにない問いだった。
メンテ
CY585-Needfest-06-04-01 ( No.287 )
日時: 2010/11/23 11:23
名前: レムリア/セイ/ハリー
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

 エリアドの言葉は、レムリアの心の中に漣を(さざなみ)を立てた。

“厄介な状況”

 そう、確かに、状況は厄介だった。その原因となっているのが自分だろうと思うと、レムリアの心には更に大きな波が生じていた。

「姫君? お加減が宜しくありませんか?」

 その表情を暗くしたレムリアに、セイが声を掛ける。

「・・・いえ――少し、闇の気に当てられましたが、今はもう大丈夫です」
「それなら、宜しいのですが・・・」

 セイが言葉尻を濁して言うのをハリーが引き取った。

「姫様、無理は禁物ですよ。我らが付いております故、大船に乗った気持ちで居て下さい」

 場の緊張を和らげようと、敢えて軽妙に言うハリーの言葉は、だが虚しく宙に消える。普段は、ハリーの言葉に突っ込むセイも押し黙ったままだ。

「・・・国王陛下の元へ参ります」

 やがて、漸くレムリアがそう言うと、生真面目に一礼してセイが言う。

「判りました、姫君。謁見の間まで護衛致します」
「ま、陛下に顛末をご報告しなければね」

 ふぅ、と一息つくと、ハリーは行儀悪く親衛王騎士達に顎を杓った。そんなハリーの不調法にも成れてイルンか、親衛王騎士達は眉根一つ動かさずに、左右に分かれて随行の位置に付いた。

■連絡
 何度直しても化けるので、文字そのものを変えました。宜しく。
メンテ
CY585-Needfest-06-04-02 ( No.288 )
日時: 2011/09/14 06:20
名前: エリアド
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「・・・烈火、送還。」

 低い声とともに深紅の鎧と細身の双剣が紅蓮の炎となって宙に消える。
 そのまま彼女(レムリア)の傍らに歩を進め、静かに声をかける。

「・・・レムリア。あまり気にし過ぎるな。けして君だけのせいではない。」

 低い声で続ける。

「・・・そう私が言ったところで、気休め程度にしか聞こえぬかもしれないが、このような事態に状況を見誤ることは、ある意味危険なことだと感じるがゆえに、あえて言う。

 おそらく今回の事態は、様々な状況が複合的に重なった結果だと考えるべきだ。そうでなければ、今までありえなかった規模の異変がこうも立て続けに起きるとは到底思えぬ。これは、けして偶発的におこったできごとなどではなく、起こるべくして起きた避けえぬ必然のできごとなのだろう。

 そして、そうなった理由には、おそらく私自身も関わっている。私の場合は、私自身の身に宿した“力”というより、私が持つ“阿修羅”や他いくつかの魔遺物(Artifacts)の持つ“力”せいかもしれないが。」

 少しだけ間をおいて。

「──『“力”は、“力”を呼ぶ。』といった言葉もある。・・・ずっと、あまり良い意味で使われることのない言葉だと思っていたが、今回のことで、私はその言葉を必ずしも悪い意味で捉える必要があると思わなくなった。

・・・今まで、このような考え方をしたことはなかったが、君と知り合って、そうした“力”を持っていたがゆえに“私は君に出会えた”という言い方もできる、ということに気づいたし、君を見て、・・・そしてまたさきほどの者たちに相対して、『“力”とその持ち手は不可分なのだ』ということもわかった。」

 彼女の瞳を正面から見て。

「・・・レムリア。君が私にそのことを気づかせてくれたんだ。・・・心から感謝する。」

 それは偽らざる本心だった。

■プレイヤー追記
当方のPC環境ではNo.287の5行目に文字化けがあるように見えます。
あるいは、この書き込みでも化けてしまうのかもしれませんが、『表情を惛(≒昏/くら)くした』でよろしいでしょうか?
意味やニュアンスを取り違えるとあまりよろしくない部分かと思われるので、一応念のため。

■追記2
同じコードに化けたので、惛←この文字だと判断して大丈夫そうですね。

■追記3
文字変更の件、了解しました。
メンテ
CY585-Needfest-06-04-03 ( No.289 )
日時: 2012/10/07 15:20
名前: レムリア/ハリー/セイ
参照: シェンドル/王宮/大聖堂

「・・・判ります。いえ――判らなければなりません。わたしたちには、余り時間が残されていないと言う予感がします」

 レムリアの表情は硬い。

「国王陛下のご判断が必要です。只でさえ危うい均衡にあるこの国を、これ以上の危険に晒す事はなりません」
「オレもそんな嫌な予感がするね」

 ハリーは肩を竦めた。

「建国以来、揺らいだ事が無い大聖堂の結界に綻びがあるんだ。何時、何が起きてもおかしくないね」
「王都が落ちれば、リトルバーグまで遮るものが無い。クロックポートの回復は疎か、我が国は中央部を抜かれ遙か後背地まで席捲され、西部の商業都市群と東部の旧ヴェルナ法王領が分断される。王都を絶対に抜かれる事があってはならない」

 セイの言葉に、黙って聞いていた親衛王騎士達も頷く。

「このままでは、それが現実となりかねないがねぇ」

 ぼやくように言うハリーは、口元に薄い笑みを浮かべた。

「皆さん、行きましょう。ここで話していても、事態は変わりません」
「おっと、姫様の言う通りだ。陛下の所に行こう」
「判った。二人先行だ。後は姫様の周囲を固めてくれ」

 セイの指示に、親衛王騎士が速やかに持ち場に動く。流石は幾多の騎士の中から選抜され、王家直衛の任に着くだけはある。もっとも、その選抜された騎士でも、セイ、ハリーには遠く及ばないのだが。
メンテ
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